自然ガーデントップ いのちの森に咲く花 森林浴について 森林と健康 森林浴の効果を高めるには 森と木の快適さ

森林浴について

木々に囲まれた水輪の庭
フィトンチッドの香りは主にテンペル類と呼ばれ、副交感神経の働きが活発化し、安らいだ気分をもたらしたり、血圧の低下、鎮静作用、アルファ波が増加するなど、森の中で空気を吸い込むだけでも、それらが自然に作用されているのです。

木の香り成分の中で睡眠をとると疲労回復が早く、疲労に対する自覚症状も少ないとの結果報告もされています。

水輪ナチュラルファームの木
(ファームは農薬を使用されることのなかった
牧草地だった為、土と草の自然の香りがします)
また、香りだけではなく、清浄な空気、風の音、鳥の鳴き声、水のせせらぎ、木漏れ日の光、木々の緑色などさまざま森林環境が人の諸感覚器を通じて、自律神経系に刺激を与え、自律神経機能をよいバランスへと変動させるため、森林浴は心身を癒す効果があることが報告されています。
1000年以上の歴史を持つ戸隠神社
奥社へ続く杉並木は
その香りと天に向いまっすぐ伸びる
太い杉の木が圧巻です。
自然と気が整っていく感じがします。
木々に囲まれ、木材をふんだんに使用して作られた、水輪・水織音・グリーンオアシスでのご宿泊はゆったりした心地よい空間です。都会の喧噪から離れて、森林浴を思いっきりお楽しみ下さい。
戸隠鏡池
澄んだ空気と池に写る雄大な戸隠連山
目に映る草花や聞こえてくる野鳥の鳴き声
飽きることのない時間と空間を味わえます。
参考文献

本間請子著
「〈森へ行こう〉人の心身を育み、癒す森林浴」
「森林浴が人の心身に及ぼす効果-その医学的実証-」
 
共にフレグランスジャーナル社

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教育出版より 「森林と健康」
「森の香りフィトンチッドの働き」

森の香りの正体とは

 森へ行き、森の香りただよう空気をからだ一杯あびる森林浴は自然の健康法として多くの人々に楽しまれています。
 森の香りの正体は、植物が出しているフィトンチッドであることはよく知られています。フィトンチッドの機能を知り、私たちの暮らしを快適にしたり、健康維持に役立てたりするこころみが広がっています。
 フィトンチッドは、香り成分(揮発性)以外のものもあります。樹木のほか草本類などすべての植物は、多かれ少なかれフィトンチッドをつくり出しています。例えば、いろいろなハーブ、薬草、日本茶・紅茶、わさび、コショウもフィトンチッド成分を含み、私たちはその成分を利用しているのです。
 植物がフィトンチッドを含むのは、光合成のしくみが関係します。
 光合成により植物はブドウ糖をつくり、自らのからだ(セルロース、リグニンなど)をかたちづくりますが、そのとき微量ながらいっしょにつくられるのがフィトンチッドです。言い換えると、光合成を行う植物はフィトンチッドです。言い換えると、光合成を行う植物はフィトンチッドをつくり出しているのです。なお、きのこ(光合成を行わない)もフィトンチッドをつくります。
 フィトンチッドといっても、一種類ではありません。その種類は非常に多く、例えばスギやヒノキでは。それぞれ50種?100種類ほどと言われています。ただ、各植物種に含まれる量は微量です。フィトンチッドの種類は、植物種ごとに異なります。世界中の植物で考えたら、それこそ無数のフィトンチッドが存在し、まだ私たち人類が知らないものがたくさんあるのです。

自分をまもる“武器”

 なぜ植物はフィトンチッドをつくるのでしょうか。植物が自分をまもるための武器として使うためです。例えば、自分を脅かすほかの植物への成長阻害作用、昆虫や動物に葉や幹を食べられないための摂食障害作用、昆虫や微生物を忌避、誘引したり、病害菌に感染しないように殺虫、殺菌を行ったりと実に多彩です。
 土に根ざして生きる樹木は移動することができません。そのため外敵からの攻撃や刺激を受けても非難できませんからフィトンチッドをつくりだし、それを発散することで自らの身をまもるわけです。
 1930年頃、旧ソ連のB.P.トーキング博士は、この植物の不思議な力を発見しフィトン(植物が)チッド(殺す)と名づけました。

どの木に、どれだけ

 フィトンチッドは、植物からどのように放出されるのでしょうか。一般的なのは葉から放出されるもの。森林浴で私たちが楽しむ森の香りです(揮発性フィトンチッド)。そのほか、茎、花、根などからも放出されます。
 森の香りをさらに調べると、テルペン類というフィトンチッドが一番多いことが分かります(そのほか、フェノール類、炭化水素類など)。つまり、森の香り成分の主役はテルペン類というわけです。
 では、森の樹木には、どのくらい香り成分(主にテルペン類)が含まれているのでしょうか。それを測る方法の一つが、精油を取りだすというもの。精油(すんだきれいな液体)のほとんどがテルペン類です。
 樹木(幹・枝・葉を細かく砕いたモノ)を熱水で煮るか蒸して精油を取りだすことができます。
 そうして取りだした精油量(テルペン類などの量)を樹種別に比べた表があります。(葉から取りだした量の比較)いわば、樹木のフィトンチッド量の比較です。ここでは、トドマツ、シキミ、ネズコ、ヒノキ、スギがとくに多いという結果がでています。全般的に、針葉樹のほうが精油量(フィトンチッド)を多く含んでいます。
 樹木に含まれる精油量は、季節的に変化しています。毎月の量を測定した結果(主な樹種)では、毎月6?8月にかけて精油量が最大となり、冬は少なくなることが分かっています。したがって、森の香り成分(テンプル類)の量もこの傾向を示すと思われます。

フィトンチッドの効果

 森林浴による心身のリフレッシュのほか、フィトンチッドは私たちにどのような効果をもたらしてくれるのでしょうか。
 他の生物に対して攻撃的に作用し、自らを防御するためのフィトンチッドは、人間にとっては有益であることが経験的によく知られています。フィトンチッドの機能をくらしに採り入れる次のような工夫例があります。

  • 抗菌・防虫効果
    食品への防腐、殺菌。カビ、ダニへの防虫。抗菌作用は病原菌に有効。副作用の心配がない。
  • 消臭・脱臭効果
    空気の浄化。悪臭を消す効果。
  • リフレッシュ効果
    森林浴の爽快感?自律神経の安定。肝機能を改善。快適な睡眠。

 自然の産物フィトンチッドは、副作用がない穏やかな効き目が特徴です。けれども、濃度が濃すぎると(例えば、人工的に取り出して濃縮して使うなど)逆にストレスになるおそれがあります
森の中など、自然の状態では濃度が濃すぎるということはありません。

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「森林浴の効果を高めるには」

 森の香りを浴びて快適さを楽しみ、心身のリフレッシュで健康に役立つ森林浴ですが、できるだけその効果を高めるにはどんな点に留意したらいいのでしょう。森の香り成分をいっぱいに浴びるためのヒントをあげましょう。以下に紹介する結果を整理すると、

  • 針葉樹の森の
  • 林の中で
  • 午前中

に森林浴を楽しむと、もっとも高い効果が期待できるのです。

どんな森--香り成分が多いのは

 できるだけフィトンチッドを浴びるためには、フィトンチッド(ここではテルペン類)が多い森へ出かけましょう。森の香り成分テルペン類は、精油として取りだすことができることは、本章「森の香り フィトンチッドの働き」で紹介しました。
 樹木がもつ精油量(≒テルペン類)は、樹種によって大きな違いがあり、針葉樹のほうが多い傾向にあります。
ですから、精油をたくさん含む樹種の森を選んで出かけてみてはいかがでしょう。
 実際に放出されるテルペン類を測定した結果例では、スギ林、アカマツ林が広葉樹林より高い濃度を示しています。

いつ--香り成分が高い時期

 樹木に含まれる精油量(≒テルペン類)にはかなり季節的変化が見られます。調査結果を表したグラフから1年のなかで6月頃が最も含有量が多いことが分かります。
 アカマツ林内に実際に放出されているテルペン類を測定した結果をみると、一日のなかでは午前11時に一番濃度が高いことが分かります。

どこで--香り成分濃度が高い場所

 また、このグラフは、林の緑(林緑)から林内に入ったいろいろな場所で濃度を測定した結果を示しています。グラフから一目瞭然なのは、林緑から60m中へ入った場所がもっともフィトンチッド濃度が高いという測定結果です。
 自動車道路に隣接したクロマツ林内で測定した結果では、道路沿いの場所に比べて林の中に入るほどフィトンチッド(テルペン類)濃度が高い結果が出ています。なお、クロマツの葉による大気浄化作用も働いて排気ガスは林に入るほど低くなっていますから、ここでもある程度林に入った方が森林浴効果が期待できるのです。
 山麓、中腹、山頂で濃度は違うのでしょうか。スギ林でテルペン類を測定した結果、(一部)から、麓より中腹、山頂がテルペン(ここではa-ピネンというテルペン類の一つ)濃度が高いことが分かります。

「フィトンチッドを健康に役立てる」

フィトンチッドの抗菌作用

木の香り(フィトンチッド)が抗菌性をもつことは昔から知られています。寿司のまな板、桜餅や柏餅の葉などの例です。抗菌性があるので食品を長持ちさせるのです。
 木材では、ヒバ(ヒノキアスナロ、通称青森ヒバ)やヒノキが腐りにくいことで知られています。これも材に含まれるフィトンチッド成分の効果です。木を腐らせる木材腐巧菌に対する防御作用があり、そのため腐りにくくなるわけです。
 私たちのくらしにかかわる例をあげてみましょう。
食とフィトンチッド:
桜の葉 クマリンという香りが生じ(塩漬けしたもの)、抗菌性を発揮。
柏の葉 オイゲノールという抗菌性物質。
ヒノキの葉・まな板 カンファー、a-ピネン、リモネン、カジノールなどテルペン類の成分が多く含まれており、これらの相乗効果により抗菌作用が働く。
サワラ サワラの葉に含まれるピシフェリン酸が強い酸化(食べ物を腐らせる)防止作用を持つ。
ワサビ アリルイソチオシアネートの成分に抗菌作用。
住とフィトンチッド:
住宅部材 ヒバ、ヒノキなど、木材腐巧菌に強い抗菌性をもつ材を土台に使用するなどの工夫例。ちなみに、平泉の金色堂はヒバ材で、法隆寺などに代表される古いお寺がヒノキで造られている例は数多い。
室内の香り ヒノキ、ヒバ材などのフィトンチッドの抗菌作用、鎮静作用の利用。室内芳香剤、香りの建材(芳香建材)、ふとん、衣類、石鹸、入浴剤など。

ヒノキ材がすごい理由

 私たちにとってマイナスの微生物(大腸菌などのように病気を引き起こす菌)を防ぐ抗菌剤として、フィトンチッドが注目されています。抗菌剤には、ヨード化合物、フェノール、アルコールなど化学合成でつくられるものが知られています。これに対して、フィトンチッドの抗菌剤は、コストが高いものの副作用や残留毒性の心配がない点に期待が集まっているのです。
木材の中で、とりわけヒノキ材、ヒバ材の抗菌性が注目されています。細菌類(黄色ブドウ球菌、枯草菌)、カビ類に対して強い抗菌作用をヒノキが持つことが分かっています。
ヒバ材のフィトンチッド成分(ヒノキチオール)は、胃潰瘍、慢性胃炎、十二指腸潰瘍の原因になるとされる病原菌(ヘリコバクターピロリ)を抑える効果があります。
 ヒノキ材(木曽ヒノキ)に含まれるフィトンチッドが、院内感染の原因となる菌(MRSA)を全滅させる結果が報告されています(国立小児病院アレルギー研究室)。
 そんな抗菌効果を応用して、ヒノキ(そのほかヒバなど)の精油(フィトンチッド成分)が入ったワックスで病院の床掃除をしてMRSAの菌を少なくするような使い方例が検討されています。
 一般家庭では、ヒノキ材をできるだけ使った(床、壁にも)造りにして、住宅内の抗菌効果を高めることが期待されています。

ダニを防ぐ

 抗菌とともに住まいのアレルギー原因の一つであるダニを抑えるフィトンチッドの効果が注目されています。気密性が高く、高温多湿の住宅(とりわけじゅうたん、カーペットなど)を好むダニにはかゆみやぜんそくなどのアレルギー症状を引き起こすことが知られています。スギ、ヒノキなど多くの木材に含まれるフィトンチッドはダニの繁殖を抑える効果を持っています。ダニアレルギーに悩む家庭で、カーペット・じゅうたん、畳を木材フローリングに変える例が増えるなど、住まいのアレルギー対策としても木材が見直されているのです。

フィトンチッドの消臭作用

 フィトンチッドの消臭作用も私たちの健康にとって見逃せません。フィトンチッドには私たちを悩ます悪臭を消す効果があるのです。冷蔵庫内の活性炭はにおい成分を吸い取るものですが、フィトンチッドにはにおいの元を立つ働きがあるのです。悪臭成分そのものをフィトンチッド分子内に取り込み、分解して無害化してくれるのです。
 フィトンチッドの消臭作用でいま注目されているのが、シックハウス症候群やアレルギーの予防に役立てるというものです。
 合板などの接着剤を使う建材からでる揮発性有機化合物(ホルムアルデヒドなど)が眼を刺激したり、頭痛を引き起こすシックハウス症候群、アレルギー、喘息などの症状を起こすことが問題になっています。合板のほか、家具、カーペットに使用されている接着剤、塗料など住宅内にはアレルギーの原因となるさまざまな揮発性有機化合物が含まれています。対策として、ホルムアルデヒド濃度を低くする建材が開発されています。
 フィトンチッドがそのホルムアルデヒドを除いてくれるのです(中和し、無害化する)。例えば、一番除去効果が高いとされるスギの葉では、眼や鼻が刺激される程度の濃度(数ppm)のホルムアルデヒドを9割除去するのです。木材(ヒノキ、ヒバ)では5割と半分ほど除去します。しかもフィトンチッドの効果は半永久的です。

フィトンチッドのリフレッシュ作用

 森林浴でなじみのアルフィトンチッドの働きの一つがリフレッシュ作用でしょう。身体だけではなく、ストレスを和らげるなど心の健康にも役立つのがフィトンチッドです。
 まず、薬効成分を紹介しましょう(表)。これらの多くは療法に役立てられています。これ以外でも、昔から経験的に療法に使われてきた樹木成分は少なくありません。
森林浴で楽しむ香り成分は、テルペン類とよばれます。テルペンの中には、快適性増進作用、薬理作用を持つものがあり、空気中にただよう(揮発性)テルペン類を吸い込むことで健康に役立つことが分かっています。木の香り成分のもとで睡眠をとると、においの無い場合に比べ疲労回復が早く、疲労に対する自覚症状の訴え率も少なくなるという結果も報告されています。
 そのほかのリフレッシュ作用をいくつかあげてみましょう。
やすらぎ:
 木のにおいの一成分a-ピネン(アカマツなどマツ類の特徴的なにおいのもと)のもとでは緊張時に生じる精神性発汗が減少し、逆に指先の血流量が増加し、脈拍数が減少して安定化するなど、副交感神経の働きが活発化し、安らいだ気分をもたらす。
血液低下・集中力増加:
タイワンヒノキ材油のにおいが、血圧低下させ、作業能率を増加させ、気分を集中させる働きを持つ。
鎮静:
 スギ材、ヒノキ材、白檀、沈香、ラベンダー等の香りには鎮静作用がある。ユーカリ葉油、ヒノキ材油のにおいが脳血流を減少させ、鎮静化に作用する。
興奮・眠気覚まし:
スギ、ヒノキ、モミなどの葉やジャスミンの香りには頭がぼんやりしているときにすっきりさせる興奮作用がある。
落ち着き・アルファ波増加:
ヒノキ材のにおいでは心身ともに落ち着いた状態の時に見られるアルファ波が増加する。ほのかに香るヒノキ風呂にひたると、疲労がとれ、気分さわやかになるのは、温浴で血液の循環がよくなるせいもあるが、ヒノキ材の香りの鎮静効果も見逃せない。

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「森と木の快適さを科学する--生理人類学の視点」

 森林浴で心身がリフレッシュすること、木造住宅が健康によいことなど、私たちは経験的にこれらを理解し、森林からの恩恵を活かしながら暮らしています。
 森林総合研究所の宮崎良文さん(医学博士)は、人の生理学的な評価から、森や木材の快適さを科学的データで実証しようと、研究を続けています。
 (月刊「林業新知識」全国林業改良普及協会 連載?「森の快適さを科学する」2000年1月号〜12月号より)

人の感情を数値的に評価

 森林、樹木、木材など、現代人の周囲に存在する自然環境がもつ快適感を、脳血流量や血圧などの人の生理的数値から、実証しようという発想で、宮崎さんの研究は始まりました。
 「自然環境や建築物などの周囲のものを対象にする研究はたくさんありますが、人の状態を評価する方法というのは、今までは質問紙ぐらいしかありませんでした経験的には分かっているけれど、数値化されていない部分のデータを蓄積して埋めていく、これが私の研究です」と宮崎さんは話します
 例えば、日常の仕事の中でストレスを感じたときに、窓の外の木を見ると気持ちが落ち着く、そういった感情の変化を数値化するのが目標であると。
 実際に行われている主な実験は、

  • 脳活動など中枢神経系の反応(脳血流量、脳波)
  • 自律神経系の反応(血圧、脈拍数、抹消の血流、瞳孔の大きさ)
  • 主観評価、(好き、嫌い等のアンケート調査)

この三方向から被験者にできるだけストレスを与えないで測定し、人の感情状態を具体的に評価していく方法です。

森林浴や木材の効果を確認

 森林浴実験では、2500歩/40分間の条件で、鹿児島県屋久島ならびに同じ湿度・温度の人口気候室を歩いた場合の比較が行われました。その結果、唾液中のストレスホルモン(コルチゾール)の値が、屋久島を歩いた場合に低下し、森林浴の効果が確認されました。「以前は、この物質は血液か尿でしか測定できませんでした。唾液ですと被験者にストレスをかけませんので、快適性研究に利用できます。分析技術の進歩が大きいのです。
 木材に関する実験では、スギ材の香りを男子学生13人に嗅がせたところ、血圧の低下、脳血流量の減少が見られ、身体がリラックスしていくことが分かりました。また、森の音を聞かせると、脈拍数や脳血流量が減少し、身体が鎮静化していくことが確認されました。この他にも、木材への接触試験。木目を見たときの視覚試験等で快適性の測定が行われています。

現代人の「幸せ」を求めて 「整理人類学」の確立を

 「人間は歴史上99.99%以上、自然の中にいたわけで、その状況下で進化を続けてきました。ですから都市環境にくらべ、自然環境において同調し、引き込みあい、快適だと感じるのは当然です」
 人工物が増加する都市の中で、本来の人間に適した環境に近づけてくれるのが、森林や木材、身近な自然なのです。
 現在、宮崎さんは、現代人の状態を評価・解釈した上で、環境との相互作用を解明していこうとする「整理人類学」の確立を念頭に研究を進めています。
 「他の学問領域にはない考え方です。健康に関して申し上げると、病気にならないようにではなくて、自分の健康状態が何かを知って積極的につくっていく。つまり『つくる健康』。人自体を理解し、人の幸せのために貢献することが私の研究の目的です」
 経験的には誰も異議を唱えることがなかった森や木材の快適性が、科学的データの蓄積によって説明可能になる、その入り口までやってきたようです。
 以下に、木材の快適性にかかわる具体的な研究結果の一例を紹介します。

「“木の香り”を嗅ぐと、人はどうなるか?」

宮崎さんは、木や葉の香り(フィトンチッド)を嗅ぐことにより、身体がどのように反応するかを知るために次のような実験を行っています。
男子大学生14人を対象に、温度25℃、湿度60%の人口気候室内で、スギ材チップ、ヒバ材チップ、ヒノキ材チップ、タイワンヒノキ材油、スギ葉油、茶葉の6種類の香り物質を吸入させた。
また、対照実験として、香り物質を添加しない空気の吸入も行った。
生理学的測定では、最新の分析機器を用いて、中枢神経系の反応として脳の血流量を、自律神経系の反応として指先を用いた血圧を、いずれも毎秒ごとに測定した。
吸入実験後に、香り物質の好き・嫌いを問う主観評価を行った。

木の香りで血圧が下がる

 主観評価では、6種類の香り物質すべてが、対照実験の空気と比べると、ほとんどの被験者に快適感をもたらし、茶葉やスギ葉油と比べると、木材チップの快適感が大きいとの結果が出ました。
 生理反応では、スギ材チップの香り物質を吸入した場合の血圧を、学生14人らの平均から見てみると、低下し、とくに吸入実験中盤の45秒前後に強く低下することが認められました。また、脳血流量においても、やはり中盤以降に低下しました。『血圧と脳血流量が下がり、主観評価でも快適と感じている。このことは、身体全体がリラックスしていることを示します』と宮崎さん。
 このように、中枢神経系と自律神経系は感情状態を反映しているため、生理学的反応を連続測定し、データを積み重ねることにより、感情の状態を正確に解釈できるようになる可能性があります。

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